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日本がアブナイ!

平和で平穏で楽しい生活が一番!・・・脱アベ・スガ、反超保守&新自由主義。左右問わず、mew基準で、政治や競馬、スポーツなどについて。写真はトロットスター・・・↓PC画面のリンク1~5は無効

設計書類偽造問題・・・何でも「官から民へ」にするのはアブナイ!(5)

 私は「官から民へ」という政策を全面的に否定するつもりはない。むしろ、その必要性
を肯定している部分もある。
 後述するように、日本は行政肥大国家であり、そのスリム化によって財政再建や官僚
主導政治の弊害、問題の解決して行くことは必要不可欠だと思っている。また、民間の力
を活かすことによって、経済を活性化やサービス向上がされることは、私自身も含め、
国民に対するメリットも小さくはないのではないか、と考える部分がある。だから、もし
国民にとって利益になるものなら、どんどん民営化や民間委託を進めればいいと思う。

 ただ、何でも「官から民に」「民にできることは民に」することがいいのか、民に任す
ことが全ていい方向に作用するのか、その部分には大きな疑問を覚える。
 その気になれば、国や地公体のやっていることの大部分は、民にもできるように思う。
だが、「民にできる」ということと「民がやるのに適している」ということとは話が違う
ように思うのである。
 私は、国には、国民の生活(教育、健康、生命等含む)の維持や安全性を守る責務が
あると考えている。(義務教育や最低限度の健康で文化的な生活に関しては憲法にも明記
されている。)そのような分野においては、官が責任をもってその政策に取り組む必要が
あるであろう。
 また、一口に官(の業務、サービス)と言っても、その内容や性質は様々である。そし
て官、民にはそれぞれにメリットとデメリットがある。それゆえ、それぞれの業務、サー
ビスの内容、性質、官・民のメリット、デメリットや、国民の利益も考えた上で、何を
官に残し、何を民に任せるのか、民に任せるとしてどのような形で、その程度のことを
任せるのかを決めて行くべきだと考えるのである。それが、「官がやった方がいいことは
官に」「民がやった方がいいことは民に」という提言である。

 この「官から民へ」の流れは、今になって始まったことではない。後述するように、
1980年代からアメリカのレーガノミックス、イギリスのサッチャーリズムを皮切りに
世界に広って行ったものである。日本でも中曽根政権が三公社の民営化に踏み切り、橋本
政権の行政改革を経て、今年、小泉政権がついに五現業と言われた国の事業の中でも最大
規模であり、民営化に対する賛否両論が続いていた郵政事業の民営化を実現するに至った
のであった。その間にも、国民が直接or日常的には関わっていない分野で、民営化や民間
委託、独立行政法人化などが次々と進められている。(今回、問題になっている建築確認
等の民間委託は、橋本政権下で行なわれたものである。)

 もし上述のような視点で、「官から民へ」の政策が進められて行っているのなら、私は
さほど問題性を感じずに、それを受け入れて行ったであろう。(それは一国民である私自
身にとっても利益になるのだから。)だが、私にはそうは思えない部分が大きいのである。
 全てがそうであるとは言えないが、一部のものの民営化には外国や関連企業、団体など
の強い要望、圧力が関わっている。また、先に行政コスト削減の数字ありきで、切る必要
性のある分野というより、切りやすい分野から民間、地方への業務委託を考えているよう
に思われるものもある。
 そのような視点で「官から民へ」の政策が進められて行くと、いずれ国民にとって
大きな弊害や問題点をもたらす危険性があるように思うのである。そして、その問題に
関わる被害が生じた時には、もう時既に遅しというケースも少なくないように思われる。

 今回の偽造問題の件もその一つの例だと思う。しかも(4.5)でも書いたように、
この問題に関わる被害(社会&経済的損失など)は、マンションの住民やホテルの経営
者だけにとどまらず、思いのほか大きい。
 それゆえ今回の件を機に、「何でも官から民に」という政策や風潮に疑問を呈したいと考えた
次第である。

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 この「官から民へ」の流れは、1980年代、アメリカのレーガン大統領、イギリス
のサッチャー首相によって始まったと言われている。
 米英は1900年代前半、世界恐慌、第二次世界大戦などを契機に社会政策を重視した
政策(ニューリベラリズム)を行うようになったが、それが国の財政を圧迫するように
なっていた上、また70年代のオイルショック以降、経済成長も翳りを見せ始めた。そこ
で両者は、いわゆるレーガノミックス、サッチャーリズムと呼ばれる新自由主義的な政策
に取り組んだのである。市場原理に基づく自由競争の推進を目指し、そのために小さな
政府化、減税政策などを実施した。その中で、社会政策・公共コストの削減、期制緩和、
そして「官から民へ」の民営化政策も含まれる。

 日本でも、やはり80年代、中曽根政権の下で「官から民へ」政策が大きく進められ
て行くことになった。
 日本は戦後、荒廃した経済、社会から復興するために、国主導で交通・道路・通信等
のインフラ整備や経済・社会政策等を行なって行く必要があった。そのお陰もあって、
驚異的な高度経済成長&復興を遂げたのであるが、他方で行政がどんどん肥大化し、
財政赤字が拡大した上、官に権限が集中することによって、様々な弊害も出るように
なって来た。経済、社会もある程度高いレベルで安定したこともあって、だんだんと
行政改革を行なう必要性が問われるようになり、中曽根政権の下では国の三大事業で
あった三公社<国鉄(現JR)、電電公社(現NTT)、専売公社(現JR)>の民営
化が行なわれることになる。
 90年代、橋本政権も行政改革に取り組み(今回の検査機関の民間委託はこの政権の
下で行なわれた)、そして2000年代の小泉政権では、五現業の中で最大の国営事業
であった郵政事業の民営化がついに決められたのであった。(*1)

アメリカ、イギリスの場合は、もともと18~9世紀に自由主義の先進国であったの
であるが、20世紀に社会政策を重視せざるを得ない状況が生じ、「大きな政府」に
なり過ぎたことを是正しようという動きが働いた部分がある。
 他方、日本の場合は、昔から国家主導の経済、社会政策が行なわれていて、いわゆる
お上意識も強く、国の管理に慣れている国であった。(何かあった時には「国が何とか
できないか」と考えがちである。その傾向は、今回の耐震偽装事件でも見られる。)
 三公社やその他の民営化や規制緩和に関しても、国民が望んだものというよりは、
トップダウンの形で進められたものが多い。

 そして、その背景には、外圧があったことが否めない。大きな所では、専売公社
や郵政事業の民営化に関しては、アメリカからの度重なる強い要求があったと言われて
いる。(主に米国産煙草の輸入増加、保険、金融市場の開放を求めていた。)種々の
規制緩和も含め、アメリカの要望や影響力はかなり大きなものがある。
 近時は、自由競争や国際化に基づき国内の企業から民営化、規制緩和の要望も強く
なっている。(建築確認等の検査機関の民間委託は、建築に関わる業者や金融関係の
企業から強い働きかけがあったと言われる。検査機関には、国や地公体からの天下り
も多く、お互いに利益があったのかも知れない。)
 いずれにせよ、日本の「官から民へ」政策の多くは、国民の要望や利益を考えて、
行なわれたものではないのである。
(小泉首相はよく民営化の成功例として、NTTの例をあげる。確かに市場開放に
より国民の選択肢は増え、電話料金やサービスの面では国民にも利益はあった。
しかし、かつて7~8万円して債権化されていた電話加入権の廃止が一方的に予定され
債券的価値を失いつつあるなど、国民に不利益を与えたことはどう説明するのか?
時に個人の家庭でも十万単位、大企業では億単位の損失につながっているのに。>

 そして、もう一つの問題点は先に数字ありきという点である。
 もちろん、財政政策を行なうためには長期、短期的視野をもって、数値的目標を
掲げることは必要なことだと思う。
 今、この件に関してチョコチョコ勉強しているのであるが、この「官から民へ」
の動きと大きな関わりを持っているのが、公務員の削減の問題である。
 またの機会に書きたいと思うが、実は日本の公務員数は他の先進諸国に比べて
少ない方であるというデータがある。また分野によっては、人数が不足している
所もあり(警察、入国管理関係など)、やみくもに公務員を削減するよりも、
むしろ給与体系や公務員特典の見直しやムダなコストの削減で対応すべきであると
いう意見も少なくない。
<よく公務員の話をする時に、市町村役場の事務職などの公務員の光景を思い浮か
べ「お茶を飲みながらまったり仕事をして、高い給与をとっている」という人がいる
が(今は市町村役場も人数削減で大変な所も多いようだが)、国家&地方公務員は
そんなに楽な仕事をしている人ばかりではない。>

 しかし、政府はまずは公務員の削減ありきという目標を強く打ち出しており、
小泉政権で言えば2000年に公務員の25%削減を目標に掲げて定員法を改正し、
まずは10年で10%という数値をあげて、改革に取り組んでいる。
 そして、実際、省庁に直接勤める公務員は削減にしくいため、外部にある機関
(それも市民生活に近い機関が多い)を統廃合したり、独立行政法人化、民営化
することによって、その数値目標を達成しようとしているのである。

 小泉首相は「郵政民営化によって二十数万人の公務員が削減できることになる」
と豪語していたが、賢明な方々はご存知のように、彼らの給与は国が負担していた
わけではない。ただ数値目標の達成には近づく。政府は国立の病院や大学をはじめ、
研究他の機関を独立行政法人化し、職員の非公務員化を進めている。政府金融機関
の統廃合、民営化も行なおうとしているが、この中には一般市民や中小企業にとって
身近で有益な存在であった住宅金融公庫や商工中金なども含まれている。(しかも、
彼らの給与は民間銀行より安く、経済諮問委員会でも、もし民営化されたら、この
給与で頭取を引き受ける人はいないだろうと揶揄されていたほどだ。)

 もう職務の内容や国民への貢献度、必要性を考えることよりも、切れるところから
切ろう、独立行政法人化や民営化できるところからしよう<特に外国(主に米国)や
民間企業から要請があるところは民営化を急ごう>というような姿勢で「官から民へ」
の政策を進めているのである。 
 社保庁に代表されるように、公務員数も仕事の内容、コストもムダ使いの権化みた
いな所にはなかなか手をつけられず、ある意味では、国の行政の中で発言権が弱い立場
のところから(or外国や民を利するところから)どんどん切り捨てて行こうという姿勢
すら感じるところがあるのである。

 小泉首相の改革パートナーである竹中元・経済財政政策大臣の報告書<改革なくして
成長なしV・平成17年度>を見ても、いかにも経済学者らしい(表面的?、机上理論的)
分析&目標が記されているが、「小さな政府」や「官から民へ」の記述では、官の持つ
べき公共的な視点や国民生活への配慮はほとんど見られないように感じる。
( http://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je05/05-00001.html 参照 ちなみに、この報告
書の中にも、JTの民営化に外国の要請があったことが書かれていた。)

 そういう姿勢で「官から民へ」を推し進めて行くことは、いずれ国民生活に大きな
影響や歪みを生じさせることにつながるのではないかと懸念する次第である。

*1
<ちなみにレーガンは元・アナウンサー&俳優で、その容姿やふるまい、演説の上手さ
によって個人的人気が高い大統領であり(今でも最も偉大な大統領のアンケートで
TOPになっている)、その個人的人気による支持を背景に改革を推し進めて行った
と言われる。またサッチャーは女性ながら鉄の宰相と呼ばれ、内閣の中で首相が大統領
制に近い権限を持つような体制を作り、かなり強いリーダーシップを発揮して抵抗勢力
である議員、官僚、団体を押さえ込んで行ったと言われている。
 中曽根、橋本も個人的人気の強い首相であったが、レーガン、サッチャーの手法に
ついて読んでいると、つい小泉首相のやり方を思い浮かべてしまうところがある。
 ちなみに英米は同時に減税政策を推し進めたのだが(小泉首相が自分の任期中に増税
をしたくないのは、その影響もあるのかも知れない)、中曽根、小泉政権では増税の
政策が持ち上がっているところに矛盾点がある。また、レーガン、サッチャーは「強い
アメリカ、イギリス」を標榜し、軍事力を背景にした保守主義を強めて行ったのも特徴
であった。中曽根、橋本、小泉にもその点では共通する面があるように思うのだが、
それだけは真似しないで欲しいと切に願う。>
 
               <つづく> THANKS
Commented by B4 at 2005-12-06 00:45 x
やっと最初から読むことができました(^^)ノ
教育についても既に問題が議論されていたのですね。
今回の耐震偽造問題は「株」のリスクと似た部分があるなと思っています。
自己責任なので色々と情報を調べるのは当然ですが、これができている
個人は少ないと思います。しかし、どんなに一生懸命調べても決算短信
などの情報が偽装されていたらどうにもなりませんよね・・・
それで損しても国が補償してくれたなんて話は聞いたことはありません。
今回は、人命に関わる問題なので、同じ土俵で話をするのはまったくナンセンス
だし、国が全ての損を補償してくれる訳ではありませんが、国には根本問題を75日以上たっても忘れずに追求し、解決する義務があると思ってます。
再発や似たような問題が少しでもなくなるように・・・

(ちょっと例えが良くなかったかもと思って何回か書き直しましたが、まだ誤解を
生むような表現になっているかもしれません。お許しを・・・)
Commented by mew-run7 at 2005-12-06 03:57
B4さん、コメント有難うございます。

長々とした文を読んで下さって有難うございました。
そして、どうかお気軽に書き込んでくださいませ。
万一、誤解が生じた時は「誤解だ~」って書いて下さればOKですので。

そうですね。株を買う時にも似てますね。というか、何を買う時でも共通する
ものはあるかも知れません。
強いて違いを言えば、決算短信でもPCのスペック表でもいいですが、
それが偽造されていて人命に危害が加わるということと、もともとは国が
決算等をチェックすることになっていたのを民間機関に委託したために
被害が拡大した可能性もあるということなのかも知れません。

国も検査機関の調査や新たな法整備などを検討しているようですが、
マンション解体、建て直しその他には莫大な費用がかかることから、
「官から民へ」にしたことで、かえって財政負担が増えるかも知れないと
いう皮肉な結果になってしまうように思いました。

Commented by ニケ at 2005-12-06 21:05 x
分譲マンションなどの耐震強度偽装問題について、「公的支援」を決めましたね。
私はとりあえずおおむね賛成です。この問題が民と民との問題ではないとの立場から政府が大きく関わるべきだと思っています。
ただ、何がいけなかったのかは深く追求しないでしょうが、アメリカとは違う国であるとのことで、一安心です。

三重県知事は、この問題処理に「税金」を使うことには反対と言ってるようだが、では税金はどこに使うのが正しいのか?と聞いてみたい。
東京都知事も、今は何を言ってるのか知りませんが「国が早く方針を決めろ!」と言って、都からの支援は積極的では無かったです。
まあ、和歌山市長みたいなのも当選するのだから、首長といったって尊敬できる人とは言えないかもと思っています。

でも、一旦買取、立て直した後で再度買戻すというのだけれど・・
占有面積を少なくして戸数を増やすとのニュース(一部マンション?)は
仕方ないのかもねえ~
被害を受けた方、怒りは収まらないよね~
Commented by ニケ at 2005-12-07 20:23 x
>この問題が民と民との問題ではないとの・・
などと書き、「公的支援」の支持をを書きましたが・・

今回の事件を「官から民の顔をした官」とのとらえ方に接して、見方が甘かったかと反省です。(天下りの民もしっかり居たのだ。爆)

今日の参考人質疑、前回より良かったようにも思いますが、
でも、からっぽ頭の小泉改革では、これからも事件ばかりでしょうね。その隙に稼ぎたいだけ稼ぐという構図かな?経団連などはw
Commented by mew-run7 at 2005-12-08 04:05
ニケさん、コメント有難うございます。

(4.5)でも書きましたけど、私自身は今回の件で、国が何をどこまで
支援すべきか、またしていいのか、かなり迷うところがあります。
というのも、客観的に見て、やはりこの件は基本的には民と民の問題
だと思うからです。

もちろん検査確認というところで、国や地公体が直接、間接に関わっている
というところでは、純然たる民民の問題とは言えませんし。
さしせまった危険や公共性があるという面では、国は放置しておくわけには
いかないという特殊事情はあるわけですけど。
今回の支援策もビミョ~という感じがしています。

逆になんで国は、こんなに早く手厚い支援を決めたのか・・・ちょっと不思議に
思う部分もあるです。




Commented by at 2005-12-09 14:03 x
>逆になんで国は、こんなに早く手厚い支援を決めたのか・・・ちょっと不>思議に思う部分もあるです。

も~~~、分かってるくせにぃ~~(
また、非公開コメントになってまう、、。
Commented by mew-run7 at 2005-12-10 01:40
若さん、コメント有難うございます。

いや~~~、runは一庶民ですから~~~。
タレ込み、お待ちしています。S関係以外のネタ希望?
Commented by at 2005-12-10 11:09 x
いやぁ~、庶民っぽくないぞぉ~~(笑)
Sって、ねぇ~
まったく変な世の中になったわねぇ~(近所のおばさん風
Commented by mew-run7 at 2005-12-11 10:17
若さん、コメント有難うございます。

ここでは(?)日本を憂う一般市民なんです!<きっぱり
それにしても、困った世の中になったわよねぇ~。(まだおばさんには
ならないぞ~・・・と思うのは、おばさんかしらん?)
by mew-run7 | 2005-12-04 07:40 | 政治・社会一般 | Comments(9)

by mew-run7