何か放送法4条の解釈変更(礒崎関連文書)に関する話が、ゴチャゴチャになってしまった感じがするので、改めて大まかな経緯(重要だと思う部分)をまとめておきたいと思う。
安倍晋三氏&超保守仲間はかねてより、TBSやテレビ朝日の一部の報道番組に不快感を覚えており、批判的な意見を出すことがあった。<特に「筑紫哲也のNEW23」とか「久米宏のニュースステーション」ね。>
14年11月に放送法4条の解釈変更(補充)を検討し始めたのは、安倍内閣がTBS系の2つの番組に不満を抱いたことがきっかけだった。(@@)
『2014年11月18日夜、安倍晋三首相(当時)が衆院の解散・総選挙を控えてTBS「NEWS23」に出演。番組内の街頭インタビューで安倍政権に否定的な意見が放映されると、安倍氏が「おかしいじゃないですか」と批判した。同年11月20日、自民党は在京キー局に対して当時の萩生田光一筆頭副幹事長名で「公平中立」を求める文書を送付した。衆院は同年11月21日に解散され、12月14日に投開票された。》
そして、立民党の小西博之議員が公表した礒崎関連文書によると・・・
『2014年11月26日付の資料によると、当時首相補佐官だった礒崎陽輔氏が総務省の放送政策課に電話。「コメンテーター全員が同じ主張の番組 (TBS サンデーモーニング)は偏っているのではないかという問題意識」があり、「政治的公平」 の解釈や運用・違反事例を当時の情報流通行政局長からレク(説明)をしてほしいと依頼したと、資料には記されている。』(同上)
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従来の放送法4条の解釈だと、放送番組の政治的公平性は「一つの番組ではなく、放送事業者の『番組全体を見て判断する』」とされて来た。
しかし、安倍内閣は、一つの番組だけでも、政治的公平性の判断ができるような解釈に変えたいと考えたのだ。^^;
『放送法第4条 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
1 公安及び善良な風俗を害しないこと。
2 政治的に公平であること。
3 報道は事実をまげないですること。
4 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
従来、放送番組の政治的公平性は「一つの番組ではなく、放送事業者の『番組全体を見て判断する』」とされてきた。
ところが、安倍政権の下で総務省は2016年2月、新たな政府統一見解を衆院予算委員会に提出。「従来からの解釈については、何ら変更はない」としつつ、「番組全体」を見て判断するとしても「番組全体」は「一つ一つの番組の集合体」であり、「一つ一つの番組を見て、全体を判断することは当然のことである」と見解を示した。
この政府統一見解は、放送番組の「政治的公平」をめぐる事実上の解釈変更だと受け止められた。(BUSINESS INSIDER 23年3月6日)』
最初の部分に記したように、礒崎首相補佐官は14年11月に総務省の官僚に連絡をとり、その後、解釈の文面をどのように変えるか協議を行なった。<以下、登場する人物の役職は全て14~16年当時のもの>
礒崎関連文書によれば、礒崎氏は「一つの番組でも明らかにおかしい場合があるのではないか、という点について検討するよう指示」。
「“番組全体でどうバランスを取っているのか問われれば、放送事業者が責任を持って答えるべきものと考えます”というような答弁はできないものか」、「国民の意見が分かれるような課題について、 ある番組で一方の主張のみを放送した場合に、他の番組で他の主張について放送していれば政治的公平性が保たれている、くらいのことは言えないのか。具体的に書いてほしい」などと要望。<「国論を二分する場合」という表現を入れることも要望。>
総務省の官僚が、その要望に沿って、何度も書き直した文面が資料として残っている。(・・)
安倍首相の提案により、国会の総務委員会で高市総務大臣が(自民党議員の)質問に応じて答弁する形で、解釈の変更(or補充)を行なうことに決定。
そして、高市総務大臣は15年5月に、礒崎関連文書に記された通りの解釈を発表したのである。
『高市氏は、参院総務委員会で「これまでの解釈の補充的な説明」と前置きした上で、一つの番組において一方の主張のみ相当時間繰り返す放送をした場合は「政治的公平」に反する場合があると答弁。放送法の新たな解釈を示した。
「国論を二分するような政治課題について、放送事業者が一方の政治的見解を取り上げず、殊更に他の政治的見解のみを取り上げてそれを支持する内容を相当の時間にわたり繰り返す番組を放送した場合のように、当該放送事業者の番組編集が不偏不党の立場から明らかに逸脱していると認められる場合といった極端な場合においては、一般論として政治的に公平であることを確保しているとは認められない」(2015年5月12日・参議院総務委員会)』
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さらに、高市総務大臣は16年2月、何と放送局が「政治的公平」を欠くと判断される場合、電波を停止する可能性があるとまで言及した。(゚Д゚)
「全く改善されないことを繰り返した場合、何の対応もしないことを約束するわけにはいかない」
「電波停止に至るような対応を放送局がするとも考えていないが、法律違反した場合には罰則規定も用意されていることによって、実効性を担保する」「将来にわたってそれがありえないとは断言できない」(2016年2月8日・衆院予算委員会)』
今年3月、国会で礒崎関連文書に問われた高市氏が、「自分について書かれた部分は捏造だ。事実ではないことが書かれている」と主張したことから、国会では文書に記載された「高市レク」が行われたかどうかが一つの争点になっているのだが・・・。
実は、15年3月5日に「総理レク」なるものも行われている。(・・)
『総理レクの結果 2015年3月5日
山田総理秘書官から情報流通行政局長に電話
○総理へのご説明は本日16時5分から実施。礒崎補佐官のほか、今井総理秘書官と自分(山田氏)が同席。
○今井氏と自分から、(礒崎補佐官の)説明のような整理をすると総理単独の報道が萎縮する、極端な事例以外はなんでも良くなってしまう、メディアとの関係で官邸にプラスになる話ではない等と縷々(るる)発言した。
○これらの発言にもかかわらず、総理は意外と前向きな反応。総理からは
・政治的公平という観点からみて、現在の放送番組には明らかにおかしいものもあり、こうした現状は正すべき、
・(放送番組全体で見ることについて)「JAPANデビュー」は明らかにおかしい、どこでバランスを取っているのか、
・FCC(米国)のように(政治的公平を)廃止した国はともかく、日本の放送法には「政治的公平」の規定があって、守られていない現状はおかしい、等のご発言。
○礒崎補佐官からサンデーモーニングはコメンテーター全員が同じことを述べている等、明らかにおかしいと発言。これに対し、総理から
・「放送番組全体で見る」とするこれまでの解釈は了解(一応OKと)するが、極端な例をダメだと言うのは良いのではないか、その意味で(補佐官の整理は)あくまで「極端な例」であり、気をつかった表現になっているのでこれで良いのではないか、とのご発言。
○また総理から①タイミングとして「今すぐ」やる必要はない②国会答弁をする場は予算委ではなく総務委とし、総務大臣から答弁してもらえばいいのではないか、とご発言。
○これに対し、自分(山田氏)から一度整理をすれば個々の事例の「あてはめ」が始まり、官邸と報道機関の関係にも影響が及ぶ等の発言をしたものの、総理は「有利不利ではない」「全部が全部とは言わないが、正すべきは正す」とのスタンスだった。』
安倍晋三氏に、このレクがあったかどうかの事実を確かめることはできないが。もし記載内容が事実であれば、安倍首相も解釈変更に賛同していたことが伺える。
そして、一番の問題点は、高市総務大臣も含め、安倍内閣が、自分たちにとって望ましくないと思う番組を抑制するために、解釈変更(or補充)を行なったことにあるということを、改めて強調しておきたいmewなのである。(@_@。
THANKS