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このブログでは、ほとんど経済・金融系のことは書かないのだけど。7月末に印象深い&重要なニュースが出ていたので、少し触れておきたい。(・・)
7月28日、日本銀行の新総裁・植田和男氏の下で開かれた金融政策決定会合で利上げ+αが容認された。まだほんのわずかであるが、これで、ついに「脱アベ・黒川路線」の方向に踏み出して行こうとする姿勢を見せた。(**)
この動きには賛否両論あるが。日本がアベノミクスによる異常な財政・金融政策から更生するためには、必要な一歩ではないかと思う。(・・)
それまで日本は、約10年余り、安倍元首相が提唱したアベノミクス政策を受けて、安倍元首相が任命した前総裁・黒川東彦氏の下で「異次元の金融緩和」(黒田バズーカ)なる壮大な実験ごっこを行なっていた。
しかも、これは長引く不況から脱するためのカンフル剤的な施策だと言われていたのだが。結局、「2年で物価上昇率2%」の目標は10年立っても実現できず。今も、異常な状況が続いている。(-"-)
<「異次元の金融緩和」とは、『日銀が黒田東彦総裁のもと2013年4月に導入した大規模な金融緩和政策。日銀は「量的・質的金融緩和」と呼ぶ。2%の物価安定目標を2年程度で実現するため、日銀が長期国債を大量購入し、世の中に供給するお金の量(マネタリーベース)を拡大することが柱。導入当初は、マネタリーベースを年間約60兆~70兆円ペースで増やし、マネタリーべースと、日銀が保有する長期国債、上場投資信託(ETF)を2年間で2倍に拡大する方針を掲げた。前任の白川方明総裁時代に導入した、事実上のゼロ金利や国債などの資産買い入れを柱とする「包括的な金融緩和」を抜本的に強化した。(毎日7.31)>
ちなみに、日銀が保有する国債の残高が3月末の時点で581兆円余りある。
安倍元首相が22年5月にに「1千兆円ある(政府の)借金の半分は、日銀が買っている」「日銀は政府の子会社だ。60年の(返済)満期が来たら借り換えても構わない。心配する必要はない」と豪語していたのだが。(おもちゃ銀行じゃないんだから!)いかに異常なご都合主義の発想で、国の財政&金融を扱っていたかがわかる。(~_~;)
また、日銀はETF(上場投資信託)購入策で積み増してきた保有総額時価が、23年3月末で53.1兆円に上っている。日銀が多くの大企業の大株主に(筆頭株主にも)なっている。これも、かなり異常なことだ。(-_-;)
7月31日になって、日銀は2013年1月~6月期の日銀策定会合の議事録を公開した。
黒田東彦氏が13年4月に日銀総裁に就任し、「異次元の帰入緩和」策を提唱した時の会合の議事録もはいっている。(・・)
報道によれば、黒川氏からは「2年」の根拠は示されず。また、会合に出席した委員からは「ギャンブル性が強い」「不確実性がある」と懸念する声が出ていたこともわかった。(~_~;)
黒川氏は会合の冒頭で、「異次元の金融緩和を2年程度行なう」ことを提言した。
『この会合では、黒田総裁をはじめ政策委員の多くが2%の物価目標を2年程度で実現することへの意気込みを示しましたが、実現の難しさを指摘する声が相次いでいたことがわかりました。(NHK23年7月31日)』
NHKのニュースのタイトルは『日銀 異次元緩和導入時の議事録を公開 「2年」の根拠言及なし』だったのだが。トルがつけられていたように、何故、黒川総裁が2年という数字を出したのか、その根拠は示されなかったという。<NHKの記事は*1に。>
『日銀は31日、黒田東彦前総裁が「異次元緩和」と称される大規模な金融緩和政策を導入した時期を含む2013年1~6月の金融政策決定会合の議事録を公開した。
黒田氏は、大胆な金融緩和を「第一の矢」とする経済政策「アベノミクス」を掲げる安倍晋三政権の指名で日銀総裁に就任。黒田氏の就任後初となる13年4月の会合では、物価が前年比2%上昇する「物価安定目標」を「2年程度」で達成するため、国債の大量購入などで日銀が世の中に供給するお金の供給量を「2倍」に増やすことを柱とする金融緩和策の導入を決めた。
議事録によると、黒田氏は会合で「分かりやすく情報発信をすることで、市場や経済主体の期待を転換させる必要がある。できることは全てやる」と述べ、大規模緩和に踏み出す流れを決定づけた。他の出席者も「新体制となった機を捉え、一段と強力な金融緩和を検討することは重要」(宮尾龍蔵審議委員)などと同調。日本経済の停滞を招いていた「デフレ(持続的な物価下落)」からの脱却を目指すことで一致した。
ただし、「ギャンブル性の強い政策となることは覚悟すべきだ」(佐藤健裕審議委員)、「(2年での目標)達成には不確実性がある」(木内登英審議委員)との懸念も出ていた。(つづく)
***** ☆
前代未聞の大規模金融緩和は「黒田バズーカ」と称され、金融市場では株高・円安が進んだ。しかし、肝心の物価の反応は鈍く、2年後の15年度の消費者物価指数(生鮮食品除く)は0%、16年度はマイナス0・2%に沈んだ。
短期決戦のもくろみが外れた黒田日銀は、16年にマイナス金利政策導入や長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)など持久戦を狙った緩和策を次々と導入したものの、物価安定目標は達成できなかった。黒田氏は日銀総裁として歴代最長となる10年の任期を務めて23年4月に退任。後任の植田和男総裁のもとでも大規模緩和は続いている。(毎日新聞23年7月31日)』
ただ、冒頭に書いたように、日銀は今年7月28日の策定会合で、「脱アベ・黒川」の方向に舵を切る姿勢を見せたのだ。(++)
『日銀は、28日まで開いた会合で金利操作の運用を見直し、これまで0.5%程度としてきた長期金利の変動幅の上限について、市場の動向に応じてこの上限を超えることも容認して金利操作をより柔軟に運用することを決めました。
植田総裁は記者会見で、金利操作にあたっては事実上1%を上限=キャップとする考えを明らかにしました。
賃金の上昇を伴う物価安定目標の達成に向け、大規模な金融緩和策の持続性を高めるねらいがあります。(略)
植田総裁は記者会見で「長期金利が1%まで上昇することは想定していないが、念のための上限、キャップとして1%とした」と述べ、今後、金利操作にあたって事実上1%を上限=キャップとする考えを明らかにしました。
日銀は国債を大量に市場から買い取って金利を抑え込んでいますが、今後は変動幅の上限を柔軟に運用することで金融緩和策の持続性を高めるねらいがあります。』
『日銀は賃金の上昇を伴った2%の安定的な物価上昇には至っていないとして、大規模な金融緩和を継続する姿勢を示していますが、足元の物価が日銀の想定より上振れて推移する中、市場では、今回の決定は日銀がさきざきの正常化に向けた地ならしだという見方も出ています。』(以上、NHK23年7月28日)
そうなのだ。今回の決定は、まさに「日銀がさきざきの正常化に向けた地ならし」なのだと思う。
経済や市場に悪影響をもたらすおそれが大きいため、急激な政策の転換を行なうことは難しいと思うが。いわゆるソフト・ランディングを目指しつつ、徐々にまっとうな財政&経済・金融政策を行なう国に戻って欲しいと願っているmewなのだった。(@@)
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