教育の憲法に「愛国心」は必要なのか?(1)~自民党のこだわり~
2006年 04月 14日
教育基本法の改正に関する動きが、慌しくなっている。
11日~13日の動向について後に記すが、その大きな焦点となっているのが、
主に自民党の一部の議員がこだわっている「愛国心」という言葉をいかに同法に盛り込む
かということである。<ちなみに現内閣の中で、このことに最も熱心なのは、おそらく
安倍官房長官である。>
50年前の自民党の結党時、その「立党の使命」には「国内の現状を見るに、祖国愛と
自主独立の精は失われ、政治は昏迷を続け・・・初期の占領政策の方向が、主としてわが
国の弱体化に置かれていたため、憲法を始め教育制度その他の諸制度の改革に当り、不当
に国家観念と愛国心を抑圧し、また国権を過度に分裂弱化させたものが少なくない」と
記されていた。
そして、昨年秋に公表された自民党の新綱領には「高い志をもった日本人を・・・私たちは
国民一人ひとりが、人間としての普遍的規範を身につけ、社会の基本となる家族の絆を
大に、国を愛し地域を愛し、共に支え合うという強い自覚が共有できるよう努めます。
そのために教育基本法を改正するとともに、教育に対して惜しみなく資源を配分し、日本人
に生まれたことに誇りがもてる、国際感覚豊かな志高い日本人を育む教育をめざします」と
記されている。
実際は自民党内の議員にも、かなりの温度差があるのだが、特に中曽根氏らを中心とした
一部の議員の間では、憲法や教育基本法に「愛国心」またはそれを示す言葉を明記すること
がある種の使命や悲願のようになっており、そのことにこだわり続けて来た歴史があった。
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だが、昨秋、自民党が結党50年を記念して、憲法改正草案を発表することになったのだ
が、彼らの思いは結実しなかった。中曽根氏を中心にした一派は、何とか憲法改正草案の
前文に「愛国心」を示す言葉を盛り込もうとし<当初は恐ろしく愛国的な文案を準備して
いたのだが、結局>前文に「国を愛する国民の努力で国の独立を守る」という表現にする
ことに決めて、自民党側に提示していた。ところが、このような前文では憲法改正自体への
抵抗感が大きくなってしまうおそれがあるとの反対意見が強く出て、自民党が草案を発表
する1~2週間ほど前に、最終的には小泉首相の判断もあって、その文が削除されてしまい、
「日本国民は、帰属する国や社会を愛情と責任感と気概をもって自ら支え守る責務を
共有し」という表現に置き換えることになってしまったのだ。
これには党内の反発も少なからずあったようなのだが、何分にも総選挙で大勝して
絶対的権力を握ってしまった小泉首相の判断によるものであったことや、草案発表まで
もうあまり時間がなかったことから、その決定を覆すには至らなかったという。
そして、その分、教育の憲法とも呼ばれる教育基本法の改正には、何とか「愛国心」を
示す言葉を入れようという意欲が強まったようにも思う。<これをベースにして、いず
れは、愛国心を憲法にも盛り込もうと考えている者も少なくないときく。>
だが、自民党は参院では過半数の議席を有していないため、法改正をなすには連立与党
である公明党の賛同を得なければならない。その公明党は、戦前、戦中に創価学会が政府
から弾圧を受け、初代&二代目の会長が不敬罪と治安維持法違反で逮捕され、二代目会長
が獄死した過去があるだけに、愛国心という言葉には戦前の軍国教育や国家主義、全体
主義を思い起こさせるものがあるとして、与党の会議では3年間に渡り、かなりの抵抗を
示して来た。<以前、公明党を応援する記事を書いたことがあるが(コチラ)、ここでは
それなりにいい働きをしてくれたと思う。>
そのせめぎ合いの結果が、今回提出された教育基本法の改正案である。ただ教育基本法
改正に熱心な安倍官房長官らが、何とか今国会中に改正をしたいと意欲を示しているもの
の、いまだに両側の立場から反対意見が多く、今国会でスンナリと改正されるか難しい
情勢になっている。幸か不幸か、小泉首相はこの件にさほど熱心ではないようで、この
法改正のために国会期日を延長する気がないようなのだ。<6月下旬には、アメリカ訪問
の予定もはいっているので、ジャマされたくはないのかも?!「そんなに改正したいので
あれば、自分(安倍氏)が政権をとってからにしたら?」と思っているのかも知れない?>
自民党や他党の一部の議員たちは、何故ここまで「愛国心」を示す言葉にこだわるの
だろう? それは教育に必要なことなのだろうか? また、それは日本にとって望ましい
ことなのだろうか? それは、また次回以降に考えてみたいと思う。
<つづく> THANKS
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*教育基本法改正に関する11日~13日の動き
11日・・・自民、民主両党などの保守系の国会議員でつくる「教育基本法改正促進
委員会」(委員長・亀井郁夫参院議員)や民間有識者団体が今国会での同法改正を目指す
大会を都内で開き、同法改正案に「愛国心の養成」などを明記するよう求める決議を採択
した。決議は、青少年の心の荒廃などを解決するために必要な「宗教的情操の涵養」の
盛り込みと、現行法にある「教育は不当な支配に服することなく」との条文の削除も主張
している。
12日、13日午前・・・ 自民、公明両党は教育基本法改正に関する検討会(座長・
大島理森元文相)を開き、同法改正の焦点となっていた「愛国心」の表記について「伝統
と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する」とすることで合意した。
「他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養う」との文言も盛り込む方針。
約3年間の与党協議が最終決着したことで、政府は今国会で同法案提出、成立を目指す。
実現すれば、1947年の制定以来、初の改正となる。
大島氏は同日の検討会で、座長案として提案し、両党とも受け入れた。
これまで「愛国心」の表記について「国を愛する心をしっかり書き込むべきだ」と主張
する自民党と、「国を大切にする」との文言にするように求める公明党の意見が対立して
いた。公明党は「『愛国心』は戦前の国家主義、全体主義を想起させる」と強調したのに
対し、自民党は「国」と「愛する」の表現は譲れないと抵抗し、調整が難航。今回、自民
党は「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんだ」と加えることで、「『国』には統治
機構を含まないこと」を公明党と確認し、折り合った。
また、調整が残っていた改正案の前文について協議、現行法にある「憲法の精神に則
(のっと)り」「不当な支配に屈することなく」の文言を残すことで合意した。「民主
主義や基本的人権の尊重などを意味し、教育の重要性を示すことにもなる」との判断
した。自民党は「公共の精神を尊重」との表現も求めたが、公明党が難色を示し、削除
された。これにより改正案に関するすべての調整を終えた。
12日、教育基本法改正に向けた与党内の検討が大詰めを迎えたのを受け、日本教職員
組合主催の緊急集会が東京都内で開かれ、約200人の教職員らが参加した。森越康雄
委員長らは「与党内の拙速な密室論議ではなく、もっと幅広い国民的な議論が必要」と
訴え、改正案の国会上程阻止を確認した。
13日午後・・・自民、公明両党は国会内で教育基本法改正に関する協議会を開き、
協議会の下に設置した検討会の与党合意を了承、前文と18条からなる与党案を正式決定
した。政府は与党案を元に法案化作業を進め、早ければ4月中にも今国会に提出する方針
だが、6月18日で会期切れとなる今国会の会期延長など、自民党総裁選に向けた政局
判断にも連動してくるため、改正案の行方には不透明感も漂っている。
政府・与党は法案の審議には40日程度かかると見ているが、審議が長引いた場合は
会期延長が必要となる。与党幹部の一人は「4月中に提出できれば会期延長しなくても
大丈夫」と語るが、自民党の久間章生総務会長は13日夜「会期延長したとしても、その
期間内に成立させることができるかどうかといえば難しい」と記者団に語り、仮に会期
延長しても成立は困難との見通しを示した。
それに加え、自民党の一部には公明党に配慮を示したことへの不満も残っており、
13日の文部科学部会では「愛国心とはっきり明記すべきだ。しっくりこない」などの
批判が続出した。
一方、野党各党は「我が国と郷土を愛する」との表記に対し、共産、社民両党が「内心
の自由の侵害」(志位和夫・共産党委員長)と強く反発。民主党は正式なコメントを避けた。
民主党内には「愛国心」の表記をめぐり、日教組の支持を強く受ける旧社会党系グループに
反対派が多く、旧民社党系や鳩山由紀夫幹事長のグループには賛成派が目立つ。各グループ
とも代表選で小沢一郎代表を支えたため、小沢執行部が対応に苦慮することも予想される。
<つづく> THANKS
親子の「愛」、友人との「愛」恋人との「愛」、全て強制ではなく自然と育まれるものですよね。しかも今回の与党の「愛国心」には別な思惑がありそうですね。もちろん「愛国心」は持って欲しいけど、まず「愛される国」作りを目指して欲しいですね。
こちらもお願いします。
なんとか多く人に知ってもらいたいですね。
本当にその通りだと思います。
愛を強制するなんて、まるで日本が国民に対してストーカーになっている
ようなものですよね~。
愛せるような国なら、何も言われなくだって、愛しますから。
まずは、そういう国や郷土を作って欲しいですよね。
本当はできるだけ自分の言葉で記事を書きたいと思っているのですが、
今回の記事は、大きな声で言えませんが、半分かそれ以上、集めた
情報をコピペ編集して作ってしまったです。^^;
<何とかこの問題をアピールしたいという気持ちだけはあったということ
で、ご容赦頂きたいかと。>
お互いに疲れにめげず、頑張って行きましょう。(~~)
この問題も憲法改正に匹敵するぐらい、大事だと思います。
東京都の日の丸、君が代の強制なども含めて、本当にどんどんアブナイ
方向に進んでいるようで、懸念しています。
野党の言う「内心の自由の侵害」というのは聞き捨てならないとおもいます。これを言ってしまうと子供の情操教育、道徳心を教える事はすべて
これに当てはまることになり、未熟な子供の判断基準にまかせるべきだ(極論すぎます?)と言う事になるのではないかと思います。
自民党の本音がどこにあるのかわかりませんが、日本では教育の現場で愛国心を教える事はタブーだというのも、スッキリしないなあと思ってしまうのです。
15条の思想、良心の自由が何を指すのかということに関しては、
憲法学でも議論が分かれるところですが。
これが「国家からの自由」(国家権力から強制されない自由)の権利で
あることを考えると、愛国心のような国家に対する評価や感情は、
特に重要視すべきなのではないかと考えます。
<一般的な「友達を大切にしよう」物を大切にしよう」というような
道徳概念とは一線を画することができると思うです。>
そのような観点から、私は愛国心は、国や学校で教えるべきものでは
ないと思います。
ホントにそうだと思います。
東京都の卒業式では、日の丸の方を向いて大きな声で「君が代」を
歌なわない職員は、処分されちゃいますから。
とても、自由民主主義の国がすることとは思えません。
最近の傾向として、「日本」「日本人」という事をあまりにも考えていなさすぎだと思うからです。
どの国にも良いところと悪いところがあると思うのですが、自分の国の良いところを伸ばし、
悪いところを直して行こうとする気持ちは、「愛国心」がないと生まれないと思います。
ただ、それを「国の言うことには黙って従う=愛国心」という考えで盛り込もうと思って
いるのなら、その考えには断固反対です。
「国や学校で教えるべきものではない」とまでは思わないのですが、過去の結果を考えると、
runさんの懸念されていることも、確かに有り得そうで怖いです。
私自身、私なりの「愛国心」はありますし、ある意味では、このブログも
国を愛するがゆえに、アレコレ書いていると言えるのかも知れないの
ですが。
ただ、国を愛するか愛さないか、愛するとしても何をどのように愛するのか
は、個人の考え方、感じ方によって違うと思うのですよね。
B4さんと私の、日本に対する考え方や感じ方、愛し方は違うように思い
ますし、安倍くんと私の場合は150度ぐらい違うかも知れません。
そういうものを、「法律」や「教育」で決められるものではないように思う
のです。
そして、また次回で触れたいと思いますが、彼らの多くは、当然にして
愛国心→国への貢献を考えているです。
私も愛国心は強制するものではなく、自然に愛し誇れるような国を作って
行くことが大事だと思います。
ただし、それは政治家によって建設されるのではなく、国民自身も含めて
みんなで作り、育てて行くことが必要だと思っています。
takeyanさんも、市民がここで生活していてよかったと思うような
地域作りをして行くために、頑張って下さいね。(~~)
愛国心に関する私見は、できるだけ早いうちに記事でも書こうと思って
いるのですが。
kenさんが書かれているように、政治家がアタマの中にある愛国心と
国民の中にある愛国心の概念がかなり異なっているケースがある
ということが、まさに問題なのではないかと思います。
私が国を愛するがゆえにここに書くことは、一部の政治家や人々
にとっては、「それは愛国心ではない」ことになり「非国民、反日的な
発想でしかないかも知れないのですよね。
国が決めた愛国心の中身こそが正しく、教育の段階でそれを取り入れて
国民の意思を統一して行くことが望ましいと考えるようでは、もう現憲法
の予定する自由民主主義は貫けなくなってしまいます。
今までの努力が水泡に帰さないように、憲法の基本理念や教育基本法
は守って行くべきではないかと考えています。