これでは、偽装国会だ！･･･与党が審議スル～で強引に予算議決か？＋共謀罪＋教育関連法

　
　 与党は、０７年度予算案を２日に衆院を通過させ、参院に送ることを決めた。衆院の
予算会で採決を行なったあと(委員長職権で採決することを決めてしまった）、衆院本会議に
緊急上程して、そのまま承認の議決を行なってしまう予定だという。＜＊１＞
　
　民主党は国会に格差是正法案を提出。１日からやっと格差問題に関する本格的な論戦
が始まったところである。＜＊２＞この他にも予算についての質問や、予算を伴う種々
の対策の提案が行なわれておｒ、野党側はまだ審議が足りないと反対しているが、与党
側は仮に野党が反対や欠席しても、与党だけで決議を行なうつもりのようだ。


　何故、ろくに審議もしていないのに、そんなに急いで強引に衆院を通過させようと
しているのかと言えば・・・２日までに衆院の議決を得れば、もし参院の議決が得られ
なくても年度内（３月３１日まで）に予算を成立させることができるからだ。＜☆１＞
　与党はとっとと衆院だけで予算成立を決めて、３月に告示される統一地方選の準備に
力を傾けると共に、安倍政権として超重要視している教育関連法案や国民投票法案など
に軸足を移したいのである。＜7月に参院選があり会期延長が困難なので、法案に優先
順位をつけ、急いで成立させて行く予定。今後もまともな審議時間をとる気がないかも。＞

　あえて言うなら、私はこれを「偽装国会」と呼びたいと思う。与党は重要な争点は
ほとんど議論しないまま、数の力だけで強引に議決しようとしているからだ。
　形式的には、きちんと手順を守っているように見えるが、実質的には国会で最も重要
な審議の部分をスル～してしまっているのである。
　２日、もし野党が採決や議決に反対して欠席したら、与党は「大事な予算の議決を
また野党が拒否して」と批判するかも知れない。だが、実際には、与党が審議を続ける
ことを拒否して、議決に持ち込もうとしているのだということをアピールしておきたい。

＊　＊　＊　＊　＊

　野党側は、前記事(コチラ）でも書いたように、「政治とおカネ」の問題を審議しよう
と何度も質問や要求をしているが、安倍内閣は話をはぐらかしてばかりで、そのことに
関する議論や閣僚事務所費の公開に応じようとしない。＜佐田前行革大臣の参考人招致
にも応じない。＞

　また、野党側は「偽装請負」に関してさらなる審議を行なうことや、キャノンの御手洗
会長（経団連会長・経済諮問委員メンバー）の参考人招致を要求している。別稿で取り
上げる予定だが、キャノンが違法な偽装請負を行なっていることは明白になっており、
安倍首相も柳沢厚労大臣も、その違法性や問題性を認めているのである。
＜「過労死は本人の自己管理の問題」などと週刊誌などで発言した労働政策審議会（厚生
労働相の諮問機関）分科会委員の奥谷禮子氏の招致も要求しているようだ。＞

　これらは国民からの関心も高く、また国民の生活にも大きく関わる問題なのだが、自民
党にとって都合の悪いものは、ともかくスル～しようという姿勢を貫いている。

　このような状況を見ていると、毎度ながら「あの０５年の衆院選であんなに自民党を
勝たせちゃうから、こんなことに」とついつい思ってしまうのだが・・・。本当に好き
勝手にやられてしまっている感じがして、悔しいというより哀しくさえなってしまう
ところがある。(-_-;)

＊　＊　＊　＊　＊

　このブログで取り上げていることの続報を少しずつ・・・。

　☆　共謀罪の修正案に関して

「共謀罪」の創設に関し、自民党小委員会が政府案の対象犯罪を５分の１程度に絞り込む
修正案をまとめ、外務省了解を得たという。
　外務省は、一律「懲役・禁固４年以上」の約６２０の罪に幅広く網をかけた政府案の
対象を絞り込むことに否定的な見解を繰り返していたが、浅野外務副大臣は「法案が成立
すれば、批准に向けて努力したい」と発言した。
　だが、外務省関係者（官僚）は「様子見」を強調。別の外務省関係者は「従来の政府
答弁と整合性のないものはだめ」と話しているようだ。＜＊３＞

　以前も書いたように、対象犯罪が一般刑法や国民の生活での言動に関わらないものに
＜薬物、銃器、人身売買に関わる犯罪など＞に限られるのであれば、かなりマシな法案
になるとは思うのだが。＜日弁連もこの点は評価していたようだ。＞
　外務省は昨年の法務委員会でも、「対象犯罪に関して、条約の留保はできない」と
強く突っぱねていたので、簡単に折れるかどうかはビミョ～なところかも知れない。


　☆　教育関連３法のうち、国の教育長任命関与は見送りか

　政府・与党は１日、今国会に提出する教育関連３法の改正案で、国による都道府県
教育長の任命への関与を盛り込むのは見送る方針を固めた。　
　政府の教育再生会議は、２月５日にまとめた教委制度の改革案で「国の責任の明確化」
を提唱。９９年の地方分権一括法で廃止された教育長の任命承認権を事実上復活する
内容を盛り込んでいた。だが、地方６団体や政府の規制改革会議から「地方分権に逆行
する」との批判が強かったこと、統一地方選を控える自民党からも文教族を中心に
「踏み込みすぎだ」と地方との対立を危惧する声が高まっていることから、政府・与党
は任命にまで関与しなくても、是正権限を新設すれば国の関与は実質的に強められる
との判断に傾いた。＜＊４＞

　教育関連法案の中で、最も懸念されていたことの一つが、国に都道府県の教育長任命
承認権を与えることであった。教育長は、教育委員会が任命することになっているが、
もし国の承認が必要になれば、都道府県の教育事務を実質的に国がコントロールする
ことになってしまうからだ。　
　ただ、「国の関与」のもう一つの柱として、法令違反などがあれば文部科学省が地方
に是正勧告・指示ができるようにする権限も盛り込まれており＜文科省は通達や学習
指導要領も法令の一種だと解しているので＞、各地方や学校の教育内容や方法に介入
して来るおそれが十分にある。
　また、教育長任命関与の見送りも、地方選を意識してのことなので、それが終わった
ら、また法改正の話を持ち出す可能性もある。

　国旗、国歌や愛国心教育などを含め、国が過度に公教育に関与することには色々な
問題点があるので、メディアや一般国民はもう少し教育法関連法案に関心をもって、
声をあげて行く必要があるように思う。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ＴＨＡＮＫＳ

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☆１

　憲法第60条　予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。２　予算について、参議院
で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても
意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の
期間を除いて30日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。』


＊１
　
『衆院予算委員会は１日夕、平成１９年度予算案の採決を２日に行うことを委員長職権
で決めた。与党は月内に告示される統一地方選に全力を傾注するため、予算の年度内成立
にこだわる姿勢で、野党欠席でも２日の衆院本会議で可決させる方針。野党は反発を強め
ており、２日以降の国会審議を全面拒否する可能性も出ている。
　与党側は１日の衆院予算委理事会で、２日午前に一般質疑、午後に締めくくり総括質疑
をそれぞれ行い、採決することを提案。野党側は、「偽装請負」問題が発覚したキヤノン
の御手洗冨士夫会長（日本経団連会長）、佐田玄一郎前行革担当相の参考人招致を求めて
抵抗したが、金子一義委員長（自民党）が与党の要求通り、２日に委員会採決を行うこと
を決めた。
　与党は、衆院予算委での採決後、予算案を衆院本会議に緊急上程し、２日中に衆院を通過
させる日程を描いている。与党側が２日の衆院通過にこだわるのは、同日までに衆院で予算
案を可決すれば、憲法の規定により参院の議決がなくても予算の年度内成立が確定するため
だ。
　これに対し、民主党の高木義明国対委員長は１日の記者会見で、伊吹文明文部科学相と
松岡利勝農水相の事務所費の詳細公表を改めて求め、「こういう状況で今週中の衆院通過は
あり得ない」と強調し、与党の動きを強く牽制した。＜産経新聞１日＞』


＊２

『民主党は１日、「格差是正緊急措置法案」を衆院に提出した。同日の衆院予算委員会
では格差問題の集中審議が行われ、民主党が最低賃金の大幅引き上げなどによって格差
是正に取り組むべきだと訴えたのに対し、政府側は成長重視路線の一環で中小企業など
の生産性向上を図り、その結果として賃金の「底上げ」を実現する考えを提示。０７年
度予算案の衆院通過を目前に控え、今夏の参院選など一連の選挙もにらんだ「政府・
与党」対「野党」の格差論争は佳境に入っている。

　「最低賃金は全国最低ラインを決めるべきだ。私たちは目標として時給１０００円と
いう数字を挙げている」。民主党の松本剛明政調会長は予算委で、政府の最低賃金制度
見直しに向けた姿勢をただした。
　現行の最低賃金は、都道府県ごとにまちまちだが、時給６１０～７１９円。民主党は
全国一律で１・５倍程度の金額への引き上げを提案した。
　これに対し、安倍晋三首相は「生活保護との整合性を念頭に置かなければならない。
しかし、（引き上げ幅が大き過ぎれば）中小企業の経営が成り立たない」と反論。政府の
「成長力底上げ戦略」を引き合いに、賃金積み増しを可能とする生産性の向上に取り組む
考えを示した。

　民主党の格差是正法案は、（１）全国最低賃金の設定（２）パート労働で短時間を理由
とする差別的取り扱いの禁止（３）パート労働者を優先的に採用する努力義務を事業主に
課す（４）募集や採用での年齢差別の禁止－－などが柱で、パート労働法や雇用対策法
などの改正を目指す。単純に「格差是正策」だけで比べると、政府提出法案の内容を
上回る政策を打ち上げた格好だ。
　同党の小沢一郎代表は２月２７日の会見で「小泉政治以来、急速に格差（拡大）が
進みつつある」と是正の必要性を強調。一方、塩崎恭久官房長官は２８日の会見で「格差
是正だけを目的に、結果平等をもたらす政策をするのはいかがなものか」とけん制する
など、お互いの「格差感」だけでなく、格差問題解決の具体策をめぐっても火花を散ら
している。＜毎日新聞　１日＞』　

＊３
　
『共謀罪創設をめぐって政府案を見直し、対象犯罪を５分の１程度に絞り込む自民党小
委員会の修正案について、外務省の浅野勝人副大臣は１日、小委の自民党国会対策委員会
に対する説明会で、「法案が成立すれば、批准に向けて努力したい」と発言した。
　共謀罪法案は政府が、国際組織犯罪防止条約の批准に必要として提出。外務省は、一律
「懲役・禁固４年以上」の約６２０の罪に幅広く網をかけた政府案の対象を絞り込むこと
に否定的な見解を繰り返していた。
　小委側は「修正について外務省の了解を得た」と受けとめるが、外務省関係者は「方針
転換したわけではない。これまで（組織犯罪阻止という）条約の本来の目的に立ち返って
絞り込むアプローチをしてこなかったが、そういうことで成立できるのなら締結に向けて
努力する。法案が成立するか注視したい」と「様子見」を強調。別の外務省関係者は「従来
の政府答弁と整合性のないものはだめ」と話している。＜朝日新聞　１日＞』

＊４
『政府・与党は１日、今国会に提出する教育関連３法の改正案で、国による都道府県教育長の任命への関与を盛り込むのは見送る方針を固めた。地方６団体や政府の規制改革会議から「地方分権に逆行する」との批判が強いことに配慮した。ただ、「国の関与」のもう一つの柱として、法令違反などがあれば文部科学省が地方に是正勧告・指示ができるようにする権限も盛り込まれており、そちらは維持する方針だ。

　３法改正については、文科相の諮問機関である中央教育審議会（中教審）が協議しており、１０日にも答申をまとめる見通し。政府・与党はこれを受け、教育委員会に対する「国の関与」を規定する地方教育行政法の改正案を国会に提出する。


　政府の教育再生会議は、２月５日にまとめた教委制度の改革案で「国の責任の明確化」を提唱。９９年の地方分権一括法で廃止された教育長の任命承認権を事実上復活する内容を盛り込んだ。


　これに対し、政府の規制改革会議は「人事権に介入する根拠が示されていない」と批判。統一地方選を控える自民党からも文教族を中心に「踏み込みすぎだ」と、地方との対立を危惧（きぐ）する声が高まっている。このため、政府・与党は、任命にまで関与しなくても、是正権限を新設すれば国の関与は実質的に強められるとの判断に傾いた。


　また、高校の履修不足問題を受け、中教審で教委が私立学校に「指導・助言・援助」できるようにする規定を検討していたが、私学関係者の「独自性が損なわれる」という懸念を受け、「指導」を削除し、より拘束力の弱い「助言・援助」にとどめる方向で調整している。
＜毎日新聞　２日＞』