長崎の平和式典での「日本政府への切なる訴え」+核問題の認識に世界とのギャップも?
2007年 08月 10日
昨日9日、長崎も被爆から62年めを迎え、平和祈念式典が行なわれた。
この春に銃撃され命を奪われた前・長崎市長の伊藤一長氏は、昨年の平和宣言で、
なかなか核軍縮を進めようとしない国際社会に向かって、強い怒りと批判を表わした。
<コチラの記事のMore部分に全文が。>
今年の平和宣言では、長崎の新市長になった田上富久氏が、伊藤氏の遺志を継いで
世界に核廃絶を求めると同時に、日本政府に対して訴える部分も多く、何だかそちら
がメインになっているようにも感じられた。
田上氏は、元・市役所員で、とても朴とつとした感じのする人なのだが。その彼が、日本
政府に「~してください」という表現を繰り返し用いながら要請するのをきいて、
何だか切なく、やるせなく思えてしまうところがあった。(-"-;)
何か「頼むから、ちゃんとしてよ~」という心の叫びがきこえ、それが被爆地の
市民や平和を願う国民の切なる思いのようにも感じられたのだ。
『日本政府は、被爆国の政府として、日本国憲法の平和と不戦の理念にもとづき、国際
社会において、核兵器廃絶に向けて、強いリーダーシップを発揮してください。
北東アジア非核兵器地帯構想」の実現を目指すとともに、北朝鮮の核廃棄に向けて、
6か国協議の場で粘り強い努力を続けてください。
今日、被爆国のわが国においてさえも、原爆投下への誤った認識や核兵器保有の可能
性が語られるなか、単に非核三原則を国是とするだけではなくその法制化こそが必要
です。
長年にわたり放射線障害や心の不安に苦しんでいる国内外の被爆者の実情に目を向け、
援護施策のさらなる充実に早急に取り組んでください。
被爆者の体験を核兵器廃絶の原点として、その非人道性と残虐性を世界に伝え、核兵
器の使用はいかなる理由があっても許されないことを訴えてください。』
<抜粋。全文は↓More部分に>
* * * * *
昨日、TVや新聞などで、長崎市民の声を色々と見聞したのだが・・・。彼らの中
には、だんだんと国内や地元でも被爆の事実が風化しつつあること、なかなか世界の
核軍縮が進まない上、日本がまた戦争をする方向に近づきつつあることへの危惧感に、
ある種の焦りや嘆きを覚えている人が少なくないのを感じた。
日本は唯一の被爆国として、世界に核廃絶を訴えるべき立場なのに、それが多くの
犠牲者や今も尚、苦悩が続く人たちにとって一番大きな願いであり、救いにもなると
思われるのに・・・。世界がどうのという前に、この1年、肝心の国の代表である政府
与党が妙な感じになっているのだから、彼らも気が気ではないだろう。
昨年後半には、中川昭一氏(自民党・政調会長)や麻生外務大臣が、公の場で核武装
議論を肯定する発言を行ない、安倍首相やその周辺は「議論は自由」だと、それを
放置するような姿勢を示した。<安倍氏はかつて核保有を容認する発言を行なったこと
もある。>そして、今年の6月には、地元選出の久間防衛大臣が原爆投下に関して
「しょうがない」発言を行なうに至り、それこそ「たまったもんじゃない」という気に
なるのもムリはない。
<久間氏は、被爆者団体からの質問状に、真摯な回答&謝罪をしなかったこともあり、
式典の参加を拒絶された。>
しかも、安倍首相は、先頭に立って、憲法改正(9条も)を主張している立場でも
ある。
その安倍首相が、式典で「非核三原則っを堅持する」「憲法の規定を遵守する」と
述べたところで、その言葉はあまりに空虚にきこえてしまうことだろう。
非核三原則を法制化して欲しいという要請も、ある意味では、日本の政府が信用できない
部分があるからかも知れない。
<私は、もし日本が本気で非核三原則を貫く気があるなら、憲法に書き込んでしまってもいい
ぐらいだと思っていたりもする。(@@。>
<ちなみに昨日、安倍氏が「非核三原則をケンジ」と言うはずが、滑舌が悪かったため
に「非核三原則をチェンジ」にきこえた人がいたようで(私はテンジにきこえた、)
2chなどで、「ついホンネが出たのか」などとチョットした話題になったらしい。^^;>
* * * * *
安倍氏が、首相としては5年ぶりに、広島・長崎の被爆者団体との懇談会に出席した
ことは評価したいが。<これも直前に急に欠席→出席に予定が変わったようで、参院選
惨敗の効果ではないかとも言われている。>
ただ、原爆症の認定に関しては、訴訟で国が連敗しているにもかかわらず、「厚労省
に認定基準の見直しを指示した」と言うだけ。結局は、次々と訴ををすることを決めており
<何と9日にも>、取り下げるかどうかはわからない状態だ。
被爆した人たちはどんどん高齢化し、医療や生活の負担も大きくなっている。訴訟が
続けば、それも心身に重くのしかかる上、訴訟の間に亡くなってしまう人も少なくない
であろう。
平和宣言の中には、そのことに対する訴えも込められていた。
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何かここまでで、かなり長くなってしまったので、あと少しだけ。^^;
広島に原爆投下が行われた6日から、アメリカのケーブルTVの有料チャンネル
HBOで「ヒロシマ・ナガサキ」(原題・White Light,Black Rain)というドキュメン
タリー映画が放映されている。<HPはコチラ・日本でも各地で順次公開中>
これは日系3世のスティーブン・オカザキ氏が監督・製作・編集を務めた作品で、
HBOが制作費を出す形で、作品を完成させた。
オカザキ氏は、500人以上の被爆者を取材した上で。広島、長崎の被爆者14人と、
原爆を投下した米軍機の乗員や科学者ら4人の証言に、記録映像を織り交ぜながら、
原爆投下の当時の状況とその後の実態を伝えようとするものだ。
私は、確か6月の終わり頃に、たまたま、この作品を紹介する番組をTVで見たの
だが。ちょうど、これから長崎や広島でプレ公開するという時期に、久間発言が重なっ
てしまい、あまりに皮肉めいた事態に、「何だかな~」と大きなため息をついたもの
だった。(-"-;)
<実は、その頃に、ブログにもこの映画のことを書いたつもりでいたのだけど。何か
アップし損ねていたみたいなので、改めて書いていたりする。>
* * * * *
これを放映したHBOは、メディア大手タイム・ワーナー傘下で、グループ全体の
受信契約数は全米で4千万を超えるという。
『米国では原爆投下が戦争終結を早め、多くの人命を救ったと正当化する意見が根強く、
プライムタイムと呼ばれる高視聴率帯にこうした映画が放送されるのは異例。HBOは
一部の反発も覚悟しながら「核戦争の壊滅的影響」(担当ディレクターのサラ・バーン
スタインさん)を伝えるため放送に踏み切った。
自宅のテレビで映画を見たニューヨークの女性(41)は「被爆者が味わった苦しみに
触れ、同じ人間として胸が痛み涙がこぼれた」と話したが、ニュージャージー州の企業
役員の男性(52)はなお「原爆投下で戦争が終わった」と主張した。<中国新聞7日>』
アメリカやいくつかの国々では、学校の授業などで、「原爆投下は、日本がなかなか
降伏せず、これ以上、米国や他の国々の死傷者を出さないためには、致し方のない行為
だった」と習うのが通例になっているときく。それを思うと、これはかなり画期的なことなのでは
ないだろうか?
その背景には、近時、アメリカ国内でも「果たして、原爆の使用は本当にやむを得ないもの
だったのか」、「実験の目的や、ソ連をけん制する意図の方が大きかったのではないか」と
いう疑問を呈する声も少なからず出ていることや、後述するように、環境問題&核の問題
への関心が高まっていることなどがあるのかも知れない。
欧米では、仮にアメリカの原爆投下は肯定するとしても、核の脅威を危惧して、二度と
使用すべきではないと、そのためにも核軍縮を行なうべきではないかという考えを持つ
人はかなり増えているようだ。
チェルノブイリの原発事故の放射能被害や、米国内も含め、核実験を行なった場所の
周辺で、自然や人体に大きな影響が出ていることから、改めて核兵器や放射能のもたらす
損害、後遺症の問題を直視して、見直して行こうと。そして、そのためにも唯一の被爆地
である広島、長崎の実態を知ることで、きちんと核の脅威、被爆地の悲惨な状況を認識
することが重要なのではないかという考え方が出ているときく。
* * * * *
それも、世界では、むしろ若い人たちの方が、環境問題と合わせて核の問題に関心を
持つ人が増えているという。
これはおそらく、ネットや交通網の発達で、グローバル化が進んでいることのプラス
の影響であろう、世界各国の若い人たちの中は、国ごとの垣根をあまり感じず、インター
ネットなどを通じて他国の状況や原爆の実態や情報を知るができるし、当事の各国の言い
分はさておき、自分たち&世界の将来に共通する問題として、これらをとらえている
ようなのだ。
近時は、広島や長崎の実情を知るために、現地を訪れる海外の若い人たちも増えている
ようだ。
ところが、日本国内では、逆に若い人たちが、ほとんど先の大戦や原爆に関心を抱か
なくなっている実情がある。何か、10~20代の人たちと話していても、それらは
教科書に出て来る「歴史上の事実」に過ぎず、何だか日本のことではない「他人事」の
ように思えている感じがあるのだ。<まあ、私もあまり人のことは言える立場ではない
けれど。^^;でも、彼らは、私の何倍もそうかも知れないことに危機感を覚えたりする。>
また機会があれば、ゆっくり書きたいが。かつては、東京の中学や高校の中には、
修学旅行で広島に行くところが少なからずあったのだが<そして、旅行前&現地でに
原爆に関する勉強をしたりしていたのだが>、近時、広島に行く学校が減って来たと
いう話も耳にしている。
何か、日本政府だけでなく、そういう部分にも、世界の流れとの大きなギャップを
感じてしまう部分がある。(ーー;)
* * * * *
最後に・・・
安倍氏は、首相続投の意思を表明している。
そして、報道によれば、安倍氏は日本の首相として、来年、日本で行なわれる洞爺湖
サミットのホスト役を務めることを楽しみにしており、大きな意欲を示しているという。
まあ、実際、安倍氏がいつまで首相を続けられるのかはわからないけど・・・。^^;
<昨日も、自民党内の各派閥の総会では、批判が続出。また森・小沢氏らの同期会では、
小沢氏が「年内は持たない」と発言。森氏も次期候補者の名(麻生、福田、谷垣)を挙げ
たとか。渡部氏が小池氏の名を出したら、小沢氏が「小池はダメだ」といったという話も?!(・・)>
ただ、首相が安倍氏であれ、誰であれ、日本で行なわれるサミットで、核軍縮・廃絶
をメインで扱うことを何故考えないのか、不思議に思う部分が大きい。
確かに、今、環境問題は世界全体、それこそ地球全体にとって、重要なことであること
に間違いはないが。核の拡散に対する危惧感が強まっている今日、ホスト役であり、唯一
の被爆国である日本が、改めて核軍縮への取り組みで主導役を果たすことには、大きな
意義があるのではないかと思うのだ。
<核兵器が減れば減るほど、「美しい星」が汚されるおそれも小さくなるんだしね。(・・)>
安倍首相&日本政府には、是非、そのことも検討して欲しいと思う。
THANKS
<9日は、銃の話を書くと予告していたのだけど。何か記事を書き始めたら、話の流れが
合わなくなってしまったので、また、いずれの機会に。m(__)m>
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<報道記事は、↓Moreの部分に>
長崎・平和宣言 07年
「この子どもたちに何の罪があるのでしょうか」
原子爆弾の炎で黒焦げになった少年の写真を掲げ、12年前、就任まもない伊藤一長前長崎市長は、国際司法裁判所で訴えました。本年4月、その伊藤前市長が暴漢の凶弾にたおれました。「核兵器と人類は共存できない」と、被爆者とともに訴えてきた前市長の核兵器廃絶の願いを、私たちは受け継いでいきます。
1945年8月9日、午前11時2分、米軍爆撃機から投下された1発の原子爆弾が、地上500メートルで炸裂しました。
猛烈な熱線や爆風、大量の放射線。
7万4千人の生命が奪われ、7万5千人の方々が深い傷を負い、廃墟となった大地も、川も、亡骸で埋まりました。平和公園の丘に建つ納骨堂には、9千もの名も知れない遺骨が、今なお、ひっそりと眠っています。
「核兵器による威嚇と使用は一般的に国際法に違反する」という、1996年の国際司法裁判所の勧告的意見は、人類への大いなる警鐘でした。2000年の核不拡散条約(NPT)再検討会議では、核保有国は、全面的核廃絶を明確に約束したはずです。
しかしながら、核軍縮は進まないばかりか、核不拡散体制そのものが崩壊の危機に直面しています。米国、ロシア、英国、フランス、中国の核保有5か国に加え、インド、パキスタン、北朝鮮も自国を守ることを口実に、新たに核兵器を保有しました。中東では、事実上の核保有国と見なされているイスラエルや、イランの核開発疑惑も、核不拡散体制をゆるがしています。
新たな核保有国の出現は、核兵器使用の危険性を一層高め、核関連技術が流出の危険にさらされています。米国による核兵器の更新計画は、核軍拡競争を再びまねく恐れがあります。
米国をはじめとして、すべての核保有国は、核の不拡散を主張するだけではなく、まず自らが保有する核兵器の廃絶に誠実に取り組んでいくべきです。科学者や技術者が核開発への協力を拒むことも、核兵器廃絶への大きな力となるはずです。
日本政府は、被爆国の政府として、日本国憲法の平和と不戦の理念にもとづき、国際社会において、核兵器廃絶に向けて、強いリーダーシップを発揮してください。
すでに非核兵器地帯となっているカザフスタンなどの中央アジア諸国や、モンゴルに連なる「北東アジア非核兵器地帯構想」の実現を目指すとともに、北朝鮮の核廃棄に向けて、6か国協議の場で粘り強い努力を続けてください。
今日、被爆国のわが国においてさえも、原爆投下への誤った認識や核兵器保有の可能性が語られるなか、単に非核三原則を国是とするだけではなく、その法制化こそが必要です。
長年にわたり放射線障害や心の不安に苦しんでいる国内外の被爆者の実情に目を向け、援護施策のさらなる充実に早急に取り組んでください。被爆者の体験を核兵器廃絶の原点として、その非人道性と残虐性を世界に伝え、核兵器の使用はいかなる理由があっても許されないことを訴えてください。
爆心地に近い山王神社では、2本のクスノキが緑の枝葉を大きく空にひろげています。62年前、この2本の木も黒焦げの無残な姿を原子野にさらしていました。それでもクスノキはよみがえりました。被爆2世となるその苗は、平和を願う子どもたちの手で配られ、今、全国の学校やまちで、すくすくと育っています。時が経ち、世代が代わろうとも、たとえ逆風が吹き荒れようとも、私たちは核兵器のない未来を、決して諦めません。
被爆62周年の原爆犠牲者慰霊平和祈念式典にあたり、原子爆弾の犠牲になられた方々の御霊の平安をお祈りし、広島市とともに、核兵器の廃絶と恒久平和の実現に力を尽くしていくことを宣言します。
2007年(平成19年)8月9日
長崎市長 田 上 富 久